慢心
無知
無謀
この時こそ、これらの言葉を痛感することになろうとは
バベル潜入から10時間余り
これまで何事も無く任務を遂行してきた俺たちの前に
そいつは突然現れた
見た目は、俺たちとそう変わらない
だが明らかに違うのは
瞳の輝き
底知れぬ闇のような瞳の見つめるものは
無への誘い
お互いを認識した瞬間
放たれる硝煙と号砲
「なんてヤツだよ!?」
吐き捨てるように叫ぶタケル
「とにかく、攻撃を集中しろ!!」
答えになってはいないが
やらなければいけない
「アイン、私が狙撃で気を引く!」
ノイズ混じりにリンの声
「よし、エリノア!援護してくれ!」
飛び交う号砲の中、隙をうかがう
空になった弾倉を素早く装填する
こんなもの、訓練通りにやれば問題はない
そう、俺たちはエリートなんだから
瓦礫の影から、踊りだそうとした瞬間
激痛が襲いかかった
「アイン!!」
「う、うがぁぁぁ!!?」
自分の眼前に映る
自分の右腕
俺たちは自分の身体の一部に
兵器を移植されている
神経と直接連動することで
一般の武器操作レベルを、はるかに超える
レスポンスを得る為だ
もちろん、ただ移植するだけではない
DNAレベルでの適合改良を受け
拒絶反応を中和した上でのことだ
それ故に
適合できる人間は極わずかでしかない
俺たちはそれに選ばれた
それは即ち
何者にも負けるはずのない
超越した能力
絶対的勝利を約束する存在
そう信じてきた
例えそれが
人道に反している行為であることだとしても
そこからは凄惨だった
ほとんど零距離に踏み込まれた俺を救うため
そいつに体当たりをしてまで突っ込んできたエリノア
しかし、その行為は無謀というほかならなかった
エリノアの体を盾にしながら
さらに攻撃を加えてくるそいつ
見掛けだけならば普通の女の子なのに
返り血を浴びるその姿は
冷徹な人形
表情一つ変えることなく
エリノアに埋め込まれた
モジュールを引き裂いていく
「こ、このやろぉぉぉ!!!」
視界を赤く染めながら
ありったけの銃撃を打ち込む
すべての銃弾を、撃ち尽くしてもなお
そいつの表情を変えることは出来なかった
そいつの眼前で虚しく響く撃鉄の音
その音を遠くに感じながら俺は感じていた
これが絶望
抗うことすらできず
ただ、一方的に蹂躙される
そして迎えるは
【死】
死ぬのか・・・・?
このまま
何もできずに
こんなところで・・・・
そこから先の記憶が途切れる
死んだ
これが、死というものなのか?
暗い闇の底
そういう表現しかできない
「アイン!!」
その声が現実に引き戻す
「死、死ねるかよぉぉ!!!」
何かが切れた
そいつの手からエリノアを奪い取り
一気に距離を開ける
その時を待っていたかのように
激しい爆発が、そいつを包み込んだ
辛うじて感じるエリノアの鼓動を聴きながら
俺の意識は再び途切れた
中編(中)
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